今回は欧州4大リーグのイエローカードの枚数に関して調べてみました. イエローカードの出されやすい時間帯,カードを貰いやすい国,カードを出しやすい審判の所属リーグなどを調べました.
以下のサイトから2010-11シーズンから2022-23シーズンまでの13シーズンのデータを使用しました.
欧州カップ戦のイエローカード数に関しては23-24シーズンのデータも利用しました.
【参考】Flashscore.com: Football Live Scores, Latest Football Results
試合終盤になるにつれてイエローカードの枚数が増加します.遅延行為や焦りなどによるイエローカードや,試合中におけるイエローカードの影響力が下がる終盤においてはテクニカルファールをイエローカードでは抑止できなくなるためと考えられます. ホームチームよりもアウェイチームのほうがイエローカードを受けやすい傾向はどこのリーグも変わりがありません. 試合数の少ないブンデスリーガはその他のリーグに合わせてスケーリングしてあります.
1試合に出されたイエローカードの枚数をヒストグラムにしてみました. 一番カードの少なかったプレミアリーグのヒストグラムと重ねてあります. 試合数の少ないブンデスリーガ,CL,ELはプレミアリーグの試合数に合わせてスケーリングしてあります.
4大リーグの中ではプレミアリーグが一番イエローカードの枚数が少ないです. ブンデスリーガもラ・リーガ,セリエAと比べるとカードの枚数が少ないです.
イエローカードの枚数に程度の差はあれど右裾の長い似たような分布です.
目を引くのがラ・リーガのイエローカードの多さですが,衝撃的なことにイエローカードが0枚で終わった試合数(54)よりイエローカードが10枚以上出た試合(199)の方が圧倒的に多いです.
ラ・リーガに次いでカードの多いセリエAですら,0枚の試合が56,10枚以上の試合が39なので,並べて見るとリーガのカードの多さが際立っています.
上の統計データを見て,「リーガのチームは荒い」,「リーガの審判は試合捌きが下手」と即座に断定できるわけでもなさそうなので欧州カップ戦でのイエローカードの傾向についても国別に調べてみました. 上で見た統計データが1試合(両チーム)のイエローカード枚数であるのに対して,ここで調べたデータは片方のチームのイエローカードの枚数であることに注意してください.
リーグ別で見たときも少なかったですが,プレミアリーグのチームは国際コンペティションのジャッジの基準においてもイエローカードが少なかったです. イングランドが特別イエローカードを出さないリーグというわけでもなさそうです.
カップ戦のデータを見ても一番多く貰っていることに変わりはありませんが,その他の国と比べてもリーグ戦ほどの差はありませんでした.(両チーム合計と1チームの枚数の統計量のスケールの違いを考慮) レアル・マドリードやバルセロナなどのボールを保持できるチームはイエローカードの枚数が少なくなること, スペインはこれらの強豪の試合数の割合が大きいことに起因している可能性もあるため,一概に「(全ての)スペインのチームは国際コンペティションではリーグよりカードが少ない」とは言えないかもしれませんが, 十分に試合数をこなしているレアル・マドリード,アトレティコ・マドリード,ベティス,バレンシア,セビージャ,ビジャレアルを見ると欧州カップ戦のほうがリーグ戦よりも0.3~0.5枚程度少なく,バルセロナに関しても0.1枚少ない結果になりました.
その他のリーグのチームが欧州カップ戦でもらうカードが減少するのか,増加するのかも調べてみました.
プレミアリーグの場合はトッテナム,リヴァプール,マンチェスター・ユナイテッドなどが0.1未満の変化,アーセナルが減少,マンチェスター・シティが増加と一貫した傾向は見られませんでした.
ブンデスリーガではドルトムント,ボルシア・メンヒェングラートバッハ,レヴァークーゼン,バイエルンがそれぞれ0.1, 0.1, 0.4, 0.5枚増加,フランクフルトが0.2枚の減少でした.チームにもよりますが,欧州カップ戦では増える傾向にあるようです.
セリエAではユヴェントス,ミラン,インテル,ローマが0.1, 0.1, 0.2, 0.4枚減少 ナポリ,ラツィオが0.1枚未満の変化でした.ラ・リーガほどではないですが,減少する傾向にあるようです.
次に気になるのが,どこの国の審判がイエローカードを出しやすいのかです.
リーグ戦と欧州カップ戦のイエローの枚数の差を見ると「プレミアリーグは平均的,ブンデスリーガの主審はイエローカードを出しづらく,ラ・リーガ セリエAの主審はイエローを出しやすい」という仮説が立ちますが...
実際のところは,下の表のようにスペイン人,イタリア人の主審がカードが少なくドイツ,イングランドの審判がカードが多かったです.
リーグ戦との差を見ても,ラ・リーガの主審は平均して1枚以上少なく,ブンデスの主審は平均して1枚以上多く,プレミアに関しては1.5枚以上も多く出しています.
100試合以上を担当している国の平均枚数を見ても,イングランド,ドイツは特に多いため意外な結果でした.
スポーツマンシップ違反を厳しく取るリーグ,ラフプレーを厳しく取るリーグなどジャッジの基準やコンペティションごとのファウルの内容の分布に違いがあるためにこのような結果になっている可能性がありますが,詳細な内容までは確認できなかったためなんとも言えません.
国名 | 平均枚数 | 試合数 |
---|---|---|
スペイン | 4.15 | 288 |
イタリア | 4.21 | 277 |
イングランド | 4.72 | 232 |
ドイツ | 4.88 | 275 |
======== | ===== | ===== |
スウェーデン | 3.44 | 124 |
トルコ | 3.78 | 146 |
オランダ | 4.05 | 219 |
スコットランド | 4.12 | 147 |
フランス | 4.18 | 225 |
ポルトガル | 4.25 | 139 |
スロベニア | 4.33 | 160 |
ルーマニア | 4.47 | 135 |
ポーランド | 4.55 | 148 |
欧州カップ戦に出るラ・リーガ セリエAのチームが特別多くカードを貰うわけでもなく,審判も特別カードを多く出すわけではないとなるとなぜリーグ戦でこんなにカードが多いのか気になります.
各国リーグの平均イエローカード数をグラフにしました.赤くなっているチームは欧州カップ戦に40試合以上出ているチームです. プレミアリーグ以外はリーグ内でカードが少ないチームがカップ戦の出場権を得ています. ラ・リーガに関して言えば,特に少ないレアル・マドリードとバルセロナはコンスタントにカップ戦の出場権を得ているため「欧州カップ戦のリーグ別イエローカードの枚数」を見るときの影響力が大きいです. このため,上でも書きましたが,「欧州カップ戦において(出場できる一部の)ラ・リーガの平均カード数が少ない」からと言って「ラ・リーガのチームが特別多く貰うわけじゃないのにリーグでたくさんもらうのはおかしい」とは言えません.
ラ・リーガ,セリエAに関しては同じクラブの平均イエローカード枚数を見てもリーグ戦より減っていることが気になります.
もしかしたら,これらのリーグのチームは相手チームにイエローカードを出させやすいプレーをしているのかもしれません.
そうであるならば,毎週,ラ・リーガやセリエAのチームと戦うリーグ戦よりも色々なリーグのクラブと戦う欧州カップ戦の方がイエローカードが少ないのも理解できます.
相手チームのイエロー誘発は良い意味ではラ・リーガは足元の技術を大切にするリーグなためファウル(イエロー)の貰い方が上手かったりするかもしれません.
悪い意味ではブンデス,プレミアのようなクリーンなイメージのあるリーグよりも小競り合いや遅延行為などが多いかもしれません.
これに関しては実際の映像を確認してファウルの内容を見ないと分かりません.
実際に欧州カップ戦でラ・リーガのチームは他のチームよりも相手にイエローカードを出させているようです.
各国の主審がカップ戦では国際試合仕様の基準を持っていてイエローが少ないだけで,国内だとリーグ仕様のジャッジの基準を持っている可能性もあります.
1試合の中でジャッジの基準が違えば混乱を引き起こしますが,1試合の中でルールの範囲内でジャッジの基準が統一されていれば構わないため,リーグや欧州カップ戦の理念に基づいていくつかの基準を持っていても不自然ありません.
仮にラ・リーガやセリエAの主審が国際試合はイエローの基準を上げ,リーグ戦は下げているとすれば,欧州カップ戦では他リーグの主審よりイエローカードが少ないのにリーグ戦では多いことも説明がつきます.
仮にそうであれば,見かけ上「寛容な主審が裁いているにも関わらずイエローカードが多いリーグ」になっているだけかもしれません.
これに関しても,実際の映像を確認してみないと分かりません.